骨粗しょう症

骨粗しょう症

骨粗しょう症は、骨の量が減って次第にもろくなり、骨折しやすくなる病気です。高齢化の進展に伴って骨粗しょう症を患っている方も増加しており、現在国内には約1,300万人の患者がいると推定されています。ただし、普段は痛みなどの症状が見られないことも多いため、骨粗しょう症を自覚されていない方もおられます。

しかし、転ぶなどのちょっとしたはずみで背骨(椎体骨折)や手首(前腕骨遠位部骨折)、太もものつけ根(大腿骨近位部骨折)、肩(上腕骨近位部骨折)などを骨折しやすくなります。椎体骨折では腰痛や背部痛が起こり、背中が丸くなったり、身長が縮んだりすることもあります。骨折のタイプによっては手術が必要になることもあります。また、骨折を契機として寝たきり状態になってしまう可能性もあります。

女性は50歳になる前に検査を

骨粗しょう症は男女ともに起こりうるのですが、特に50歳以上の女性の方に多く見られます。女性ホルモンの一つにエストロゲンという物質があるのですが、これは骨吸収を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。女性は更年期の頃からエストロゲンの分泌が低下してくるため、閉経を迎える50歳前後から骨量は急激に減少し始めるのです。早めの治療が大切となりますので、50歳になる前に一度は骨粗しょう症の精密検査を受けるよう、お勧めいたします。

骨粗しょう症の主な治療・予防法

食事療法 運動療法 薬物療法

食事療法

骨粗しょう症の治療や予防にあたっては、まず食事を見直します。骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質だけでなく、骨のリモデリングに必要なビタミンDやKなどを積極的に摂取するようにしましょう。具体的には、カルシウムは食品として1日あたり700~800mg、ビタミンDは400~800IU、ビタミンKは250~300μg/ほど摂取することが推奨されています。これらの栄養素を積極的に摂りながら、糖質や脂質、各種ミネラルのバランスも考えて食事のメニューを考えることが大切です。

一方、骨粗しょう症の人が避けるべき食品は特にありませんが、お酒やカフェイン飲料はほどほどにし、リンが多く含まれているスナック菓子やインスタント食品の摂り過ぎには注意します。

運動療法

骨は運動で適度な負荷をかけることにより、活性化されて丈夫になります。さらに筋肉を鍛えることで体をしっかりと支えられるようになり、バランス感覚も向上して転倒防止にもつながります。骨量を増やすには、激しい運動をする必要はありません。ウォーキングのような軽度の運動でも効果がありますから、とにかく長く続けてください。

薬物療法

骨粗しょう症を予防する上では食事療法や運動療法が基本となりますが、病状が進んだケースでは薬物療法を併せて行う必要があります。特によく用いられるのは、骨の破壊を抑制するビスフォスフォネート製剤です。この薬を服用すると骨吸収を抑制することが出来るので、結果的に骨形成が促進され、骨密度が高まります。また、選択的エストロゲン受容体作動薬によって骨量を増加させたり、ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤によって骨の破壊を抑制させることもあります。

骨粗しょう症を改善するため、骨の材料を補う薬も効果的です。食事によるカルシウムの摂取不足を是正するためのカルシウム製剤、腸管からのカルシウムの吸収を促すための活性型ビタミンD3製剤、骨芽細胞に作用することで骨形成を促進させるビタミンK2製剤などが代表的です。

骨折の症状

骨折すると、ほとんどの場合は激痛を覚えます。また、数時間のうちに患部周辺が腫れ上がってきます。また、皮下骨折の場合、骨や周辺組織からの内出血も起こします。程度にもよりますが、腫れが引くまでには通常2~3週間ぐらいかかります。

特に注意したいのはコンパートメント症候群です。骨折によって周辺組織が腫れ上がると、血管や神経を圧迫してしまいます。そのため血行障害や神経麻痺を起こし、筋腱神経組織が壊死に陥ることがあります。これに伴って機能障害が永久的に残ってしまうので、初期の迅速な対応が大切です。骨折の治療においては、早期にコンパートメント症候群を予防することも重要なポイントなのです。