外傷

外傷

外傷は、文字通り外的要因による組織や臓器の損傷です。コンクリートなどに皮膚を強打したり、刃物で皮膚が切り裂かれることなどで生じる創傷、内部的要因による骨折、熱的要因による熱傷、放射線被ばくによる損傷などがあります。当クリニックの院長は骨折が専門なので、特に下肢外傷や骨折、股関節外傷の難症例にも対応いたします。

創傷について

外力によって皮膚や軟部組織が損傷を受けたタイプの外傷を「損傷」と呼んでいます。切創や擦過傷、裂挫創、刺創、咬傷などがあります。このうち切創は鋭利な刃物などによって皮膚がスパッと切れたものであり、いわゆる「切りきず」です。表皮から比較的に近い部位の神経や血管などを損傷することもあるため、治療に当たっては当該部位の状態を慎重に確認し、神経などに影響が残らないよう注意します。出血が多いときは、止血などの処置も必要となります。

擦過創はコンクリートの地面などで皮膚がこすれて出来るものであり、いわゆる「擦りきず」です。皮膚の損傷自体は浅く、縫合は必要ないケースが多いのですが、創面に細かいゴミや土砂が入り込んでしまい、治癒した後も皮膚の色が変化してしまう事があるので注意しましょう。

裂挫創は鈍的外傷によって皮膚が裂けてしまった創傷です。スパッと一直線に切れるのではなく、傷口が裂けたように広がっているため、治癒に時間がかかることもあります。創部から細菌などが侵入して感染の恐れがあるときは、外科的な処置を行ったのちに、抗菌薬などを投与します。

刺創は先端のとがった針などが皮膚に突き刺さって生じる創傷です。創口は小さいのですが、皮膚の深部にある血管や神経、臓器が損傷していることもあるため、注意を要します。針などが折れて体内に入り込んでいるときは、摘出するための処置が必要となります。

咬傷は動物などに噛まれたことで生じる傷です。動物の口腔に含まれていた細菌が傷口から侵入するため、受傷後の感染リスクが高くなります。そのため、感染症を引き起こさないよう傷口を十分に洗浄し、抗菌薬を投与します。破傷風のおそれがあるときは、この予防注射も行います。傷口が多様で、治癒後も傷跡が大きく目立つこともあります。

外傷を負ったときは

外傷によって出血が見られるときは、まず止血処置を行う必要があります。清潔なガーゼや布で患部を圧迫して下さい。なお、ティッシュペーパーを用いると傷口に貼り付くので避けましょう。カッターなどで皮膚の一部を削いでしまったら、その削いだ皮膚を濡れたガーゼに包んでご持参ください。くれぐれも捨てないようにしましょう。

当クリニックが得意とする外傷

下肢外傷 骨折 股関節外傷

下肢外傷

下肢の外傷は誰にでも起こりうるのですが、特に高齢者の骨折が目立っています。加齢などに伴って骨密度が低下してくると、ちょっとした外力によっても骨が折れてしまうのです。若年者ならば、骨折しても比較的に早く治るのですが、高齢者の場合、治癒に時間がかかり、積極的なリハビリテーションが難しくなります。そのため、下肢外傷がきっかけとなって要介護状態となり、生活の質が大きく低下してしまうことがよく見られます。

下肢に生じる主な外傷としては、大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部骨折、足関節果部骨折、膝蓋骨骨折、中足骨骨折などがあります。大腿骨は体を支えて移動する重要な役割があるので、それなりに丈夫に出来ているのですが、骨粗しょう症で骨が脆くなっていたり、過度の負荷がかけられると骨折のリスクが高まります。このうち、股関節の関節包の中にある大腿骨頚部で起こるのが大腿骨頚部骨折、股関節包の外側にある転子部で起こるのが大腿骨転子部骨折です。特に大腿骨頚部骨折はなかなか癒合しないことも多いので注意が必要です。一方、大腿骨転子部骨折の場合は比較的に骨癒合しやすいため、観血的骨接合術などによって機能回復を図りやすいと言われています。

骨折

骨とその周囲は神経と血管が張り巡らされていますので、骨折すると、その部位に痛みと腫脹が出現します。骨折がひどい場合は、患部を動かせなくなったり、外見が変形したりします。しかし、単なる打撲や関節脱臼でも似たような症状が出るので、確定診断するにはX線撮影を行います。しかし、痛みがそれほどでもなく、見た目は変形していなくても、骨折していることが少なくありません。

例えば、外見上は特段の変形が認められないので捻挫や突き指だと思っていたら、実は骨折だったといったケースがあります。骨に亀裂が入っているかどうかを外から観察するだけで見分けるのは難しく、X線撮影をしてはじめて正確な診断がつけられます。軽度の骨折であっても、放置すると骨がうまくくっつかず、変形したり、治癒までに時間がかかったりしますので、お早めに整形外科を受診するようにしてください。

筋断裂

ラグビーなどのコンタクトスポーツで多く見られるのが筋断裂です。急激な力が筋肉のある部分に集中することにより、筋肉が完全に分断してしまい、激しい痛みを伴います。全身の様々な部位に起こりうるのですが、特に多いのが腓腹筋、下腿伸筋、上腕二頭筋、母指伸筋です。

筋断裂は痛みなどの明らかな自覚症状を伴いますので、見過ごされることはあまりありません。しかし、スポーツ選手の中には、筋断裂の程度によっては痛みや皮下出血などを我慢し、医療機関を受診しないケースもあるようです。その場合、後遺症が残り、スポーツ生命に支障をきたすおそれもあります。将来に影響が出ないよう、スポーツ整形などできちんと手術を受け、筋断裂を修復するようにしましょう。

骨折の症状

骨折すると、ほとんどの場合は激痛を覚えます。また、数時間のうちに患部周辺が腫れ上がってきます。また、皮下骨折の場合、骨や周辺組織からの内出血も起こします。程度にもよりますが、腫れが引くまでには通常2~3週間ぐらいかかります。

特に注意したいのはコンパートメント症候群です。骨折によって周辺組織が腫れ上がると、血管や神経を圧迫してしまいます。そのため血行障害や神経麻痺を起こし、筋腱神経組織が壊死に陥ることがあります。これに伴って機能障害が永久的に残ってしまうので、初期の迅速な対応が大切です。骨折の治療においては、早期にコンパートメント症候群を予防することも重要なポイントなのです。

股関節外傷

私たちの身体には幾つもの関節がありますが、特に外傷が起こりやすく、QOL(生活の質)を損ねやすい部位のひとつに股関節があります。股関節外傷は痛みを伴うことが多く、歩行などに支障をきたします。比較的に軽度の場合は鎮痛薬などの薬物療法、リハビリテーションなどで症状を抑えますが、そのような治療が奏功しないときは人工関節置換術が必要になります。

人工股関節全置換術

人工股関節全置換術は、まず大腿骨頭を切除してチタン合金などのステムを設置し、骨盤側の寛骨臼のへこみ部分にはカップの嵌め込み口を作製します。そして、この両側をピッタリ嵌め込むことによって股関節の機能回復を目指します。症例によって、骨セメントを使用する方式と、セメントを用いずに直接骨に固定する方式があります。

術後の経過などでも異なりますがが、人工股関節全置換術の手術から概ね1か月で退院できます。但し、退院後も定期的に医療機関を受診し、特に問題が発生していないか経過観察します。通常、手術によって徐々に普段通りの生活が送れるようになり、軽負荷の水泳やサイクリング、旅行、ハイキングなども楽しむことが出来ます。

人工股関節再置換術

人工股関節全置換術から長い年月が経過するにつれて、人工関節部の緩みや摩耗、損壊、細菌感染などが生じ、再び不都合が出てくることもあります。そのようなときには、人工股関節を付け替えるための再手術を行います。

患者様ごとに大きく異なりますが、前回の手術から20年が経過すると、約6割の患者様で緩みなどが発生し、そのうちの約半数で再置換手術が選択されています。概ね1~2か月の入院を行うことで、ほぼ元通りに復帰することが可能です。しかし、症例によっては日常生活が長期間にわたって制限されることもありますので、担当医とよくご相談するようにしてください。